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エロ、グロ、ナンセンス、アクション、純愛、
ノワール、およそ娯楽小説に必要なすべての要素を
たった一冊に凝縮してしまえるエンタメの巨匠・山田風太郎だが、
唯一彼の小説に存在しないものがふたつ。


それは「友情」、そして「家族愛」
あれだけの娯楽の最高峰のような作品群の中に、
このテーマだけがふしぎに存在しないのである。


まあ、誠也青年の交友関係は
彼が同年代の友人らからどう扱われていたか
日記などですべてを推し量れるわけではないが、
「白状は軽蔑を買うだけである」と
ある通り、若き日の風太郎は心情を吐露することを避け、
他人からの理解を得ようと思わず、自分が表面だけで
軽薄な判断をされることを望んでいる面がある。


クールな風太郎にも青春の頃があったのかあと
親近感を持ってしまいそうになるけども、
恐ろしいのは、風太郎がそれだけ「友情」に価値を
見いだしていないことも同時に分かってしまう。
風太郎は虚弱体質で戦争に行けなかったことから
同年代の青年に対するコンプレックスが非常に強く、
日記で真に愛すべき親友小西さんとの交遊が描かれているけど、
海軍へ行った優秀な親友と自分を見比べてさらにコンプレックスを
深めてしまったのではないだろうか。


それは家族の愛についても同じで、幼くして
両親を失った風太郎は、やはり「家族愛」を求めながらも、
叔父に自分の内面をさらけ出し理解を得ようとはしていない。


それは、彼にとって友情、家族愛とは偽善であり、
美化されたものではなかったからではないだろうか。
そういったものを堂々と鼓舞するには風太郎はいささか
シャイでもあるし、冷淡でもある。
彼の「天性の冷淡児」たるゆえんは、
おわかりの通り、不遇な境遇のため列外に並ばざるを得なかった
当時の世間体のせいでもある。


そしてそのふたつのコンプレックスが、風太郎作品で
重要なテーマとなっている恋愛に取ってかわることになるのだ。
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SKIN:Babyish-
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